ブダペストは国際色豊かな食の街。中華、イタリアン、韓国料理、そして和食まで揃い、選択肢の多さに驚く方も多いでしょう。
では、「せっかくハンガリーに来たのだから、本場のグヤーシュや伝統料理を食べたい！」という時、どこへ行けば間違いないのでしょうか？
この記事では、ハンガリー料理の歴史的背景を分かりやすく紹介しながら、
ブダペストっ子も通う“本当においしい店”を厳選して解説します。
玉ねぎ×パプリカ＝ハンガリー料理？ “ハンガリー風”の違和感とは
多くの日本人旅行者が抱くイメージは、「ハンガリー料理＝脂っこい」「パプリカだらけ」というもの。
しかし、このイメージが生まれたのは比較的最近のことです。
実はハンガリー人自身も、自国の料理を“magyaros（マジャロシュ＝ハンガリー風）”と呼び、
どこか距離を置いたような表現を使います。
なぜ“ハンガリー料理”ではなく“ハンガリー風”なのか？
そこには歴史的・社会的な背景が深く関係しています。
現代のハンガリー料理とは？ 多文化から影響を受けた豊かな食の歴史
グヤーシュ、ハラースレー、レチョー、ラントット・フーシュ（カツレツ）など、
ハンガリーを代表する料理は多岐にわたります。
そして重要なのはハンガリー料理が「一本の系統」ではなく、多文化が交差して生まれた食文化だということ。トルコの影響、ドイツ・オーストリアの調理法、スラヴ・ユダヤの食習慣、フランスのレストラン文化の導入。さらに、パプリカが普及したのは17世紀以降で、グヤーシュが今の形になったのは19世紀の頃です。シュトゥルーデルはオーストリアから、しかし起源はトルコのお菓子に近いです。どの料理にも「歴史」が刻まれています。
料理書（レシピブック）が語るハンガリーの食文化
1695年に出版された最初のハンガリー語料理書は、貴族の食卓のみを記録したものでした。
その後も多くのレシピが書き留められましたが、宗教、農業、社会階級が料理に強く反映されていたことが分かります。
20世紀には、華やかな都市レストラン文化（グンデル黄金期）と、戦後の貧困による家庭料理の簡素化が同時に進行し、国全体の食文化は大きな変化を迎えました。
社会主義時代がもたらした“画一化”が、料理の多様性を奪った
社会主義の時代、国家標準レシピにより「安く」「大量に」「均一に」作れる料理が優先されました。その結果は、
- 地域独自の料理が失われる
- 家庭の味が簡略化される
- “ハンガリー風＝重い・脂っこい”というイメージが強まる
という、大きな影響が残りました。現在のハンガリーでも、この影響から完全に脱却したとは残念ながら言い切れません。
では“本当においしいハンガリー料理”はどこで食べられる？
近年はラーメン、寿司、ピザなど世界の料理がブームとなり、逆に“本物の良いハンガリー料理を出す店”が少ないのが現状です。つまり、「澄んだ húsleves（肉スープ）をきちんと作れる店」や「観光客を案内できるレベルの lángos はどこで食べられる？」と、地元の人々も頭を悩ませています。
未来のハンガリー料理を作るのは誰？
料理文化を育てるには、作り手や支える消費者と継続できる経済環境、この３つが不可欠です。しかし今のハンガリーでは、消費者も、作り手も、環境も十分とは言えません。
そのため、伝統料理の継承や地域レシピの保存が難しくなっています。
家庭から始まる食文化の再生
世界中の“国民食”の発展は、実は家庭から始まりました。ハンガリーでも、日常の食卓に伝統的な調理法を取り入れることが、料理文化を未来へつなぐ大切な一歩になります。
今ブダペストで“本当においしいハンガリー料理”が食べられる店リスト
旅行者にも地元の人にも役立つ「間違いない店」をジャンル別に紹介します。
■ 伝統料理の名店（クラシック）
1. Hilda（ヒルダ）
本場のグヤーシュが有名な、中心街の人気店
https://hildapest.hu/
パチ（内臓煮込み）や szalontüdő など伝統料理が勢揃い
https://rosenstein.hu/
3. Szaletly（サレトリ）
豚ほほ肉のpörkölt (プルコルト)、rakott krumpli、mákos guba なども楽しめる
https://szaletly.hu/en
■ ハンガリー料理ビストロ
1. Stand25（スタンド25）
安定したクオリティの代表格
https://stand25.hu/
2. Buja Disznó(k)（ブヤ・ディスノー）
ハンガリー式カツレツとレバーが絶品
https://bujadisznok.hu/
■ ブダペスト郊外のおすすめ店
1. Platán Bisztró（プラタン・ビストロ／タタ）
2. Teyföl（テイフル／センテンドレ）